TOKYO / JAPAN


accent color

font size
TOP/Blog
TOP/Blog
Blog

Travel旅Thu 02.12 2026

沼津港、寂しさが残る半日旅

CHARACTERS
3,907字
MANUSCRIPT
9.8枚
400字詰め原稿用紙
READING
約8分

約8分

01沼津へ

目が覚めたのは外がまだ暗い5時頃だった。8時半に起きる予定が大きく狂ってしまった。冴えてしまって二度寝できない。夜まで元気でいられるか、朝から少し心配になる。

予定通り出発し、海老名SAで朝ごはん探し。広いフードコートに屋台もレストランも揃っている。何かしら食べたいものは見つかりそうだった。 一周してみたものの、人が多すぎるのと選択肢が多すぎるのとで、逆に選べなくなる。結局、“海老名SAといえば”と言われているメロンパンとセイボリーパンを購入した。

私はオニオンブレッド。中にクリームチーズソースが入っていて、ちゃんと満足感がある味だった。 夫は黒豚のカレーパン。衣にコーンフレークのようなサクッとしたものが使われていて、単調になりがちなカレー味に食感が生まれていた。

メロンパンはとにかく1個が大きい。「2人で1個でよかったね」と話した。紙袋に入っているから事前に見た目で判断できなかったのが惜しい。 味はメロン感が強い。これはこれでいい。そもそもメロンパンはメロンっぽい見た目だからそう呼ばれている、と聞いたことがある。発祥から考えるとメロンパンはメロン味である必要はない。 でも、メロンという名前を聞くとメロン味がしてほしいと思ってしまう気持ちも、わからなくはない。 パンでメロン味を表現する限界は、結構低めの位置にあると思っていた。緑にしているだけで味は普通、みたいなメロンパンも多い。でも今回食べたものは違った。メロンのクセのある香りがふと立ち上がってくる。 メロン味を期待する人に向けたメロンパンとして完成されているな、と思った。このメロンパンがかなり売れているということは、メロン味を求めて救われているひとが多いということだ。

パンのお供にカフェラテも買った。レギュラーサイズが巷のSサイズより小さいカップで500円。Sサイズで500円なら高いが、レギュラーサイズで500円ならまあいいか、というトリックなのか。 カップを手にした時に、まあいいか感よりもがっかり感のほうが勝つほど小さかったので、もう少し美味しいか、もう少し多いか、せめてもう少し安ければ、と思った。

02沼津港着

車を降りた瞬間、潮の匂いがした。港に来たんだなと思った。 何が食べられるかな、と歩き始めたところで動物園の臭いがした。動物園の中でもキツめな、早く通り過ぎたくなる臭い。 臭いの正体は、小動物カフェだった。この臭いの中で何かを食べるのは困難だし、食欲がなくなる。

メロンパンでお腹もいっぱいだし、食欲もなくなったしで、早速深海水族館へ向かった。

03深海水族館

25分待ち。Kindleがあるから問題なし。 チケット販売は有人窓口で一人対応。窓口を増やしたり券売機にすれば行列は解消できるのでは、と思う。でも、たくさんの人が入れるほど館内は広くはない。あえてワンオペにすることで自動的に入場規制になっているのだな、と勝手に理解した。ただ、窓口の方の喉が心配になった。

館内は道順が決められていて、『ゆっくり前に進みながらご覧ください』とアナウンスがある。前の人との距離を保ちながら、次々と見ていかなくてはいけない。気に入った生き物がいても、立ち止まることはできない。生物の名前を見て、解説文を見て、実物を見て、移動する、の繰り返し。 実物を見る時間を増やすために解説文をできるだけ早く読んだ。 小さい水槽だから仕方ないけれど、じっくり見たい派としては少し残念だった。

シーラカンスエリアにはお勉強ゾーンと、世界にここにしかない冷凍のシーラカンスがあった。来る前は小さな水族館で2,200円は高いなと思っていたけれど、貴重な深海生物をたくさん見られて満足できた。

売店でメンダコのぬいぐるみとキーホルダー、シールをいくつか購入。同僚に配る用に個包装のラングドシャも買った。 公式ガイドブックも買いたかったのだけど、1冊もなくて買えず。 レジ横にドンと置いて絶え間なく在庫補充するくらい売れ筋商品だと思うのだけど、どうなのかな。

04沼津みなと新鮮館

深海水族館を出て、沼津みなと新鮮館へ。 ただの干物ではなく、こだわって作った干物を高い金額で買いたかったのだけど、ハレの日に食べるような干物はなかった。 照明に煌々と照らされていたり、パッケージされていないものも多くて少し残念。 (私はパッケージされていないものはホコリやその他不純物が付着してそうだから買わない)

わさび屋とお茶屋で、普段自分が好き好んで買っているものを買った。新鮮な買い物ではないけれど、美味しいことは保証されている。特にお茶屋で出会ったお茶まんじゅうは絶対に美味しいと確信した。 さっき買った同僚用のラングドシャは家庭用にして、お茶まんじゅうを同僚用にスライド。ただただ可愛いだけのOEMラングドシャを家で食べることになったけれど、同僚には美味しいものを渡したい。

お茶屋では甘物も売っていて、ソフトクリームが魅力的だったけど抹茶ラテにした。 ソフトクリームには、大納言が添えられている。大納言のことは愛しているけれど、今は大納言は要らないと思ったのと、寒かったからやめた。

抹茶ラテの食券を買って窓口に渡す時、窓口のテーブルに"大納言抜きに出来ます"という張り紙があった。 出来るんかい。

05ぬまづみなと商店街

せっかく沼津港に来たから海鮮を食べたい。 ぬまづみなと商店街をウロウロするも、円柱かき揚げのお店以外、どこも同じようなメニューで、店ごとの輪郭が見えない。 「港で食べる海鮮」という強みはあるのに、横並びになると選ぶ理由が消える。大衆的な雰囲気なのに価格だけ観光地価格で、お得感も特別感もない中途半端さが残る。 いっそのこと高級路線に振り切って原価も客単価もあげたほうが繁盛しそうだなと思った。

夫が牡蠣の天ぷらが美味しそうだと目をつけた店に入った。 レジで注文し、配膳も含めその他はすべてセルフサービス。 (フードコート以外でセルフサービスにする店は、どうにも慣れない) 牡蠣天の単品と海鮮丼が2つが理想だったのだけど、牡蠣天の単品がなかったので私は海鮮丼、夫は牡蠣天の入った天丼。一口ずつ交換して食べた。

牡蠣天は当たりだった。 私の海鮮丼は悪い意味で賄いみたいだった。 端っこの部分ばかりで、マグロが筋張ってて残念だった。 たまに、漁師が船の上で神経締めした丸のままの魚を取り寄せて家で捌いて食べることがある。 そのほうが新鮮で味が濃くていいな、また注文しようかなと思った。 港町で食べる海鮮が、家で食べるものを超えてこないのは少し寂しかった。 旅先で食べる一口って、勝手に期待してしまう。

06沼津港大型展望水門「びゅうお」

海見たさに、びゅうおへ。 展望台からは海と空がパノラマで見えて、天気次第では富士山も見えるらしい。 絶景だけで十分なのに不安なのか、壁にはトリックアートや錯視なぞなぞがあった。いい景色だから自信を持ってほしい。 現在の入場料は100円。2026年4月からはキャッシュレス決済が可能になり、300円に値上げする予定とのこと。 脅威の三倍。 300円になっても最初の1回は行くと思うが、2回目は無いかなと思った。引き続き100円なら2回目も行く。

07箱根の霧

帰り道は高速道路少なめにして箱根をドライブするルートにした。 これがパラレルの分かれ道だった。 濃霧で数メートル先が見えない。ガードレール脇の一番手前の木より先にあるものは何も見えない。前も後ろも誰もいない。 カーブポイントの度に点灯するライトが霧に反射して、目の前が明るくなったり一気に見えなくなったりする。ガイドのはずのライトが、視界を攻撃してくる。 生きて帰れるのか急に現実味がなくなった。この霧の中で何かあっても、誰にも気づかれない気がした。

長い時間をかけて標高900mほどまで登り、300mまで降りたところで、濃霧はいきなりプツンと終わった。現実世界に戻されたような気分だった。 日光東照宮の交通安全お守りを持ってきていてよかった。

しばらくは避けたい道だけど、夕陽でサーモンピンクに染まった家々は美しかった。山道の下に一瞬見えた湯本茶屋の灯りも、幻想的だった。 とにかく疲れたので一番近いPAへ。ハイウェイスタンプだけは押す。 5時起きでも夕方にレッドブルを飲めば問題なし。

08〆

沼津港は半日で足りるくらいのサイズだった。 港町の風情というよりは、「ここだけ時間が止まってしまったのかな」と思う瞬間が何度かあった。

たとえば駐車場の柵。右と左で高さが全然違っていて、最初からその場しのぎで立てたみたいに見える。細かいことだけど、こういうところに町の姿勢って出る気がしてしまう。

港に着いた瞬間から小動物カフェの動物園みたいな臭いがして、せっかく潮の匂いで気分が上がったのに、食欲が一気に引っ込んだ。あれだけで結構な機会損失だと思う。

牡蠣天の単品ひとつ用意すれば客単価は上がるのに、なぜか天丼にしか存在しない。もう一品頼みたい人はいくらでもいるはずなのに、そこを取りこぼしている感じがする。 深海水族館もガイドブックがなくて、思い出として記念に買っておきたい人の熱がそこで終わる。

小さな惜しさが積み重なって、町の伸びしろが削れているように見えてしまう。 人はちゃんと集まっているし、ポテンシャルもある。 だからこそ、せっかくならもう少しだけ手を入れてほしいな、なんて余計なお世話を考えてしまった。 現状維持って、結局は後退と紙一重だし、創意工夫なしに発展はないよな、とか。

そんなことをぶつぶつ話しながら帰って、結局いつものオリジン弁当を食べて、さっさと寝た。港町のことを考えながら、やたら現実的な夜だった。